シリーズ化となった「浪花旅」も今日がいよいよ最終章である。
「バック・トゥ・・・」を制覇したことにより
アタシのテンションはかなり上がっていた。
もう怖い物は何もない!
矢でも鉄砲でも持って来い!
一杯ひっかけてもいないのに、かなり気が大きくなっていたアタシは
「なあ?次はどこ行く?いっちょ、ジュラシックパークでも行くか!」
と、モレノに誘いをかける。
だが、モレノは
「いや・・・アレは急流すべりみたいなもんじゃろ?
それはちょっと、ムリ・・・」と、歯切れが悪い。
ならば、「バックドラフトはどうだ?」と、持ちかけてみるが、
「いやぁ・・・アレは倉庫みたいなとこを自分で歩いていくんじゃろ?
それで、火が燃えるんよな・・・
自分で歩くいうのがちょっとなぁ~・・・」
と、これまた歯切れが悪い。
全く、このオンナ、アタシ以上にヘタレである。
アタシとしては折角「バック・トゥ・・・」まで制覇したのだから、
出来ればもう少し武勇伝を作りたいのである。
このまま「ヘタレ」として、おめおめと帰りたくはないのである。
しかし、このヘタレ女はなかなか首を縦に振らない。
そこで、アタシは最後の砦であるところの「スパイダーマン」を提案してみた。
ダメもとで。
すると、ヘタレ女は「うん・・・スパイダーマンなら乗ってもええかもな・・・」
と、言うではないかっ!
一体、こやつの基準はどうなっているのであろう。
アタシ的には「スパイダーマン」は危険度ランキングの1位なのである。
これを制覇出来たらアタシはもはや「英雄」だっ!
ぐらいに思っていたのである。
よしっ!奴の気が変わらないうちに「スパイダー」を攻めよう!
そう決めたアタシは迷わず「スパイダー」を決意する。
なにしろアタシは一杯ひっかけてもいないのに
気が大きくなっているのだ!
だが・・・問題が一つある。
次々とアトラクションを制覇していき、
いまや飛ぶ鳥を落とす勢いのアタシにとって、
デロリアンで死にかけたオンナ「おかん」はお荷物になっていた。
さて、おかんをどうするか・・・
アタシは、顔色も悪く無口になったおかんに問いかけた。
「お母ちゃん、スパイダーマンに乗ろうと思うんよ。
さっきのより更に怖いと思うけどどうする?」・・・と。
おかんは血の気の失せた冴えない顔色で
「いや・・・私はもうええ・・・」と力なく答える。
そうだろう、さっき死にかけたオンナが
この上「スパイダー」に乗ったりしたら、これはもう「死」は免れない。
おかんのこの選択は賢明というものだ。
では、おかんはこれで「リタイア」ということで。
さて、娘はどうするだろう?
「アンタはどうする?乗る?乗らん?」
娘に問いかけてみる。
娘は、「なあ?スパイダーマンって怖い?どんな感じ?
揺れるん?どうなるん???」
と、しつこいぐらいに聞いてくる。
あまりにしつこい娘に対し、アタシはいささか腹立ちを覚え、
「そんなに聞かれてもお母さんかて乗ったことねえのにわからんわ!」
と、ついつい口を荒げてしまい、それに逆上した娘は
「乗らん!もう乗らん!」
と、すっかりヘソを曲げてしまった。
・・・なんでこんな所まで来て親子喧嘩をしなければならないのか・・・
アタシは自分の短気に嫌気がさした。
ヘソを曲げた娘の意志は固く、テコでも乗らない様子なので
おかんと二人で待たせることにした。
アタシとモレノは最後の砦を攻めるべく、
いざ「スパイダー」へと出陣である!
我々の出陣を讃える法螺貝の音が勇ましく鳴り響く。
(・・・アタシの心の中でだが。)
だが・・・
勢い込んで「スパイダー」の列に並んではみたものの、
さっきまでの「一杯ひっかけ気分」はどこへやら、
またもや持ち前の「ヘタレ根性」が頭をもたげてくる。
・・・あぁ・・・どうしよう・・・怖いよな・・・怖い・・・
アタシらみたいなヘタレには所詮ムリやろ・・・
・・・どうして乗るなんて言うたんやろ・・・あぁ・・・怖い・・・
・・・アタシは「スパイダー」に並んだ事を後悔し始めていた・・・
モレノに至っては
「あぁ・・・おえん・・・この列を見ただけで目が回りそうになる・・・
お父ちゃんに生命保険証書の場所を教えといたほうがええかなぁ・・・」
とまで口走り、もはや「死」をも覚悟しているように見受けられた。
どうにか勇気を奮い立たせるため、やよぴょこに電話してみる。
出来れば力強い声で
「大丈夫!怖くないって!楽勝よ!」
と、励まして欲しかったのだが、
「ええっ!スパイダー乗るん!・・・姉さん達にはムリかも・・・」
と、逆に恐怖を増幅させるような発言をされてしまい、
「ち、ちょっと!ムリ?なあ、アタシらムリ???」
と、やよぴょこを問い詰め、
「う、うん・・・いや・・・だ、大丈夫・・・かも・・・」
と、無理やり言わせる羽目になった。
それから我々は尚も迷惑そうなやよぴょこを問い詰め、
スパイダーについての情報をあれこれと聞き出した。
しつこいぐらいに聞き出した。
さっき娘にしつこく聞かれて逆上したくせに。
長蛇の列も次第に先頭へと近づいてゆき、
我々はこれから乗り込む「スクープ号」とやらを
肉眼で確認出来る位置まで来ていた。
そこで我々は信じられない光景を目の当たりにしたっ!
な、な、なんと!「スクープ号」とやらは動くのであるっ!
これは誤算である。
我々はてっきり「バック・トゥ・・・」みたいに
その場であたかも動いているような錯覚を体験するのだと思っていたからだ。
我々はうろたえた。
激しくうろたえた。
そして、ダチョウ倶楽部の竜ちゃんの如く、
「聞いてないよぉ~!」を連発していた。
・・・だって、やよぴょこは「動くで!」とは一言も言わなかったのだっ!
うろたえていた我々は、やよぴょこに怒りの電話を入れた。
「ちょっと!アンタ、動くとは一言も言わんかったがん!
こんなんアタシらにはムリに決まっとるがん!」
親切に情報提供したにもかかわらず怒られる妹。
こんな言いがかりをつける姉たちとは
今すぐにでも縁を切りたい気持ちだったろう。
いよいよ我々が「スクープ号」に乗り込む時がやってきた!
もう後戻りはできない。
同乗者は、幸せそうなカップルが2組。
アタシは折角のデートで、ヘタレの我々が雰囲気をブチ壊すことを恐れ、
心の中でカップルに詫びを入れた。
(ごめん、ほんとごめんよ・・・どうかアタシらのせいで
険悪になったりしないでくれよ・・・頼むからさぁ・・・)
心の中で2組のカップルの行く末を案じつつ、
「スクープ号」へと恐る恐る乗り込むアタシ。
ゆっくりと走り始める「スクープ号」・・・
スパイダーマンと邪悪な組織のバトルを追い、
ニューヨークの街を上へ下へと駆け抜ける「スクープ号」。
きょわいぃ~!きょわいぃぃぃ~!
急上昇するかと思えば今度は急降下だ!
きょわいぃ~!きょわいぃぃぃ~!
・・・が、面白い!!!!!
ついに我々の追跡劇も終盤へと近づいた。
最後の記念撮影には余裕で応じたアタシ。
やった!やりおおせたぞ!
でかしたPOKI!
お前は今日から英雄だっ!
意気揚揚と「スクープ号」から降りたアタシは、
モレノと二人「ヘタレ卒業記念」ともいうべき記念写真を
誇らしげに買い求めた。
我々が「スパイダー」に乗ったという噂は、
やよぴょこの口から他のメンバーへも伝えられていたとみえ、
待ち合わせ場所に姿を現した我々が得意げに「記念写真」を見せると
一同からは「おぉ!!!」と、どよめきの声が上がった。
「まさか、アンタらがスパイダーに乗れるとはな!」
めがねざるは信じられない面持ちである。
どうだ!我々の底力を思い知ったか!
もう「ヘタレ」とは言わせないぞ!
帰りの新幹線での話題は、我々の「ヘタレ伝説」と
スパイダー制覇の「武勇伝伝説」でもちきりであった。
間違いなくこの日の主役はアタシとモレノだった。
いや、アタシよりもモレノこそ「MVP」にふさわしいと
アタシは秘かに思っている。
モレノよ、ありがとう!
チミの「ヘタレ伝説」は鬼嫁史上に燦然と輝く快挙である!
アタシの「ヘタレ伝説」など、どうでもいいらしいLEOの寝姿。
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